告知から受容までの長い道のり


小学校2年生


自分と同級生の違いに気づいていたと思います。


小学校5年生


≪小5・2010年5月25日≫

『遊んでくれるお友達がいない』と悩んでいるようです。
※厳密に言うと有香がしたい遊びと、同級生がしている遊びが違うということで、仲間はずれにされている訳ではありません。

 

…普通クラスがしんどいのであれば、支援クラスがあると伝えますが、支援クラスに移るのは嫌だといいます。昨晩、学校について根掘り葉掘り聞くと黙るので、「お母さんには本当のことを言って良いのよ。一緒にどうしたら良いか考えよう」と言い、本心を聞きました。

母親「有香ちゃんが悪いのではない」

有香「じゃあ、誰が悪いの?」

母親「お母さんが悪いのかな。辛いね。ごめんね」
母親「有香ちゃんは小さく産まれたの。だから、大きくなるのに、お友達より少しだけ時間がかかるの」

有香「お腹がすいた」

有香が話を切り替えました。

 

以前講演会『企業就労』で「障害について本人が理解するならば早めに伝えた方がよい。努力が足りなくて出来ないのか、障害のために出来ないのかが分かる。自己決定出来ることが増える」と聞きました。

本人への告知を検討する時期が来たのだろうか…と思います。

 

小5・2010年9月7日≫

出演したNHKのテレビニュースで自分がダウン症であると知りました。


小5・2010年9月9日≫

「ダウン症って何?」と聞いてきましたが、詳しい説明はしませんでした。その後、一度も聞いてきませんでした。


小5・2010年9月28日≫

…遊びに来た同級生一緒にニュースの録画を見ながら、同級生に向かって言いました。
有香「私ダウン症やねんて」 

 

この時点ではダウン症が障害の一つと気づいてなかったと思います。なぜなら身体障害(車椅子など)のように目で見て分からないからです。


小学校6年生


≪小6・2011年11月20日≫
有香の苦悩する姿に本人への告知を考えましたが、大学の先生に相談した結果、もう少し時期を待つことにしました。
理由としては、アスペルガー的な思考の人ならば『上手くいかないのはアスペルがーのためだったんだ。自分が悪いんじゃないんだ』と考えて気持ちが楽になる人が多いそうですが、有香の場合『出来ないのはダウン症のためだったんだ、私が悪いんじゃないんだ』と、ダウン症と自分を切り離して考えて、気持ちが楽になるとは考えられなかったからです。


支援学校 中学部1年生


≪中1・2012年6月≫
ハードディスクに録画してあるダウン症関係のテレビ番組(となりのしげちゃん等)を一人で見ていることが時々ありました。その様子から、何か思うところがあるのだな~と思っていました。

 

中1・2012年6月25日≫

…夕方、唐突に質問され、良い答が見つかりませんでした。
有香「ダウン症って何?」
母親「誰に聞いたの?」
有香「ハート展で言ってた」
母親「みんなよりゆっくり大きくなるの」


中1・2012年6月27日≫

…英会話のお迎えに行った時、先生と先生のお嬢さん(小学校時代の同級生)と私と有香の4人で立ち話をしました。
母親「Y子ちゃん、大きくなったね」
先生「伸びたみたい。もう私とあまりかわらない。でも、有香ちゃんも大きくなったね」
母親「小学校に入学したときは100センチだったから、30センチは大きくなりました」
有香「私はダウン症やねん」
先生&母親「・・・」
先生「今、何て言った?」
母親「私、ダウン症やねんって言いましたね~」
先生「有香ちゃん、難しい言葉知ってるね」
有香「みんなよりゆっくり大きくなるねん」

 

…帰宅してから
母親「有香ちゃん、一度だけだから、本当のことを教えて。もうこれっきりにするから」
有香「うん」
母親「有香ちゃん、誰からダウン症って聞いたの?」
有香「NHKのキャスター」
母親「テレビで聞いたのね。でも、あれは5年生の時でしょう」
※ニュースの冒頭で「有香ちゃんは生まれてすぐにダウン症と診断されました」というくだりがありました。
有香「うん」
母親「その時から有香ちゃんはダウン症って知っていたの?」
有香「うん」
母親「あれから2年ぐらいになるのに、何で今まで聞かなかったの?」
有香「…」
母親「お母さんが悲しむと思った?」
有香「…」
母親「聞くのが怖かった?」
有香「…」

有香「聞きたくなかった」

母親「お母さんはね、有香ちゃんがダウン症であってもなくても、有香ちゃんが大好きなんだよ」
有香「うん」

 

…しばらくしてから
有香「お母さんと私の二人だけの秘密よ」
母親「お父さんには?」
有香「言わない」
母親「お父さんも知ってると思うよ」
有香「知らない」

 

今回の「ダウン症って何?」という質問は、2年前のものとは質が違うと感じました。

『お母さんから本当のことを聞こう』と、覚悟を定めるまでに、2年近い月日が必要だったようです。

 

中1・2012年6月29日≫
最近、有香が、2004年10月に放送された番組『となりのしげちゃん』の録画を時々見ている姿を見かけていました。
私自身、もう忘れかけていて『HDDに入れたままだったんだ』と思うぐらいだったので、数十番組の録画リストの中から、よく見つけたな~と感心しました。と同時に、『まずいな~、何を考えて繰り返し見ているのかな~』とも思いました。番組は、絵本『となりのしげちゃん』のしげちゃんが成長して、4年3組の友だちに助けられながら元気に過ごしている様子を描いていました。
有香はおそらく、しげちゃんの様子と自分を重ね合わせて、自分はやっぱりダウン症なのだと確信したのだと思います。
ダウン症であると分かって以後、特別に落ち込む様子はありません。ただ、自分がダウン症であることは二人だけの秘密にしたいと言います。父親が知らないと思っているのがちょっと不思議です。

中1・2013年2月3日≫

母親「いっぱい食べて、大きくならないとダメよ」
有香「小さくても良い」
母親「自分だけ小さくても良いの?」
有香「良い」
母親「何で?」
有香「ダウン症だから
母親「ダウン症でも大きい人がいるよ。Mちゃん(小6)も大きいよ。ダウン症だから小さいという訳ではないよ」
有香「ダウン症から抜け出したい」
母親「どうやって?脱皮して?」
有香「魔法で」
母親「魔法は無理よ。生まれつきだから変えられない。ダウン症でもいいやん」
有香「嫌」

有香「Y君は?」
母親「ダウン症じゃない」
有香「普通?」
母親「うん…。有香ちゃん、普通って何?」
有香「…」

有香「Eちゃんは?」

母親「ダウン症」
有香「Nちゃんは?」
母親「ダウン症」
有香「お母さんは?」
母親「誰のお母さん?」
…母親を指す
母親「ダウン症かも」
有香「お父さんは?」
母親「ダウン症かも」
母親「有香ちゃんはダウン症、お母さんもダウン症、お父さんもダウン症。全員ダウン症でいいやん」

 
有香との会話を思い返し、「魔法で」と言われたとき、「魔法は無理」などと答えずに、「魔法の勉強をするね」と答えたら良かったかなぁ~と思いました。

 

中1・2013年2月4日≫

…「ダウン症は病気」「ダウン症は病気じゃない」で有香としばらく押し問答。
有香「ダウン症は病気」
母親「ダウン症は病気ではない。誰かがダウン症は病気って言ったの?」
有香「うん」
母親「誰?」
有香「テレビ」

 

…22時頃父親が帰宅しました。
母親「お父さんにダウン症は病気かどうか聞いてごらん」
有香「お父さんが病気じゃないって言ったら、DVDを見せてダウン症は病気と証明する」

 

 

…有香がDVDをつけました。映った映像は『ダウン症児のめざめ』でした。所々で映像を指しながら言いました。
有香「ほら見て!」
母親「これは安藤先生が作ったのよ」
有香「え~」

 

※ダウン症児のめざめ 

 医学映像教育センター https://www.igakueizou.co.jp/product/product_detail.php?product_code=WA 

 

 

…クッションでトレーニングする赤ちゃんが映りました。
母親「このクッション作ったのお母さんよ」
有香「そうなん。じゃあ、この赤ちゃん誰?」
母親「知りません」

 

…ダウン博士の顔写真が映りました。
母親「ダウンって言うのは、この人の名前よ」
有香「しょうは?」
母親「昭和??」
有香「しょうは?」
父親「症は?って言ってる」
母親「症」

 

中1・2013年2月4日 19時頃≫

…脱衣場から声が聞こえました。母親はキッチンにいました。お互いに声は聞こえますが姿は見えません。
有香「何で私はダウン症で生まれたん?」
母親「何?」
有香「何で私はダウン症で生まれたの?」
母親「…」
母親「その方が、才能を発揮できるって仏様が思ったんじゃない?」
有香「発揮って?」
母親「有香ちゃんは詩が上手でしょう。良い詩が書けるって思ったんじゃない?」
有香「あ~なるほど」

 

有香「ダウン症って病気でしょう?」
母親「…」
母親「病気じゃないよ」
有香「じゃあ何?」
母親「個性よ」

有香「個性って何?」
母親「ひとりひとり違うってことよ」
有香「病気じゃないの?」
母親「違うよ。有香ちゃんは頭が痛いとか、お腹が痛いとか、足が痛いとか無いでしょう?」
有香「時々足が痛い」
母親「ずっとじゃないでしょう」
有香「うん」
母親「だから病気じゃないよ」

 

少し前から時々DVD『ダウン症児のめざめ』を有香が見ていました。「あ~まずいな」とは思いましたが、止めるのも変なので好きにさせていました。私が思う以上に内容を理解しているようです。
『ダウン症は障害』『ダウン症は病気』と伝えた方が本人のために良いのか、このままお茶を濁したような状態をしばらく続けるか、先生方と相談して決めたいと思います。

 

≪中1・2013年2月13日≫
…11日午前3時頃に発熱しました。数年ぶりの高熱と生まれて初めての激しい腹痛に苦しみました。
母親「有香ちゃん、これが本当の病気よ。だからダウン症は病気ではないよ」 
有香「…」
母親「頭が痛かったり、お腹が痛いのが病気よ。分かった?」
有香「うん。そしたらダウン症は何?」
母親「個性よ」
有香「個性って?」
母親「色んな人がいるでしょう。皆違うのが個性よ」

有香「どうやってダウン症と分かったの?」
母親「血液検査よ」
有香「どうやって?」
母親「血液検査でA型とかB型とか0型って分かるように、血液を調べてダウン症って分かったの」
有香「ふ~ん」

 

有香「私はダウン症だから良い詩が書けるの?」
母親「それはどうかな?有香ちゃんは心が綺麗だから良い詩が書けるんじゃない?お母さんみたいに心が汚くないから」
有香「お母さんの心も綺麗やん」
母親「いいや、汚い心よ」
有香「何で?」
母親「業かな…、いや、煩悩よ」
有香「煩悩って?」
母親「あれが欲しいとか、これが嫌だとか…ね」

…(略)…

 


支援学校 中学部2年生


 

≪中2・2013年5月7日≫
…事情があり、学校まで迎えに行ったとき、先生から声をかけられました。
先生「○○さん、カナダとか九州とか、あちこちにお友達がいてすごいですね」
母親「全部、ダウン症繋がりなんです」
有香「Mちゃんがダウン症なの」

 

…先生と別れてから
母親「Mちゃんがダウン症って知ってたの?」
有香「知ってるよ。生まれたときからダウン症や!」
母親「Nちゃんは?」
有香「生まれたときからダウン症や!」
母親「じゃあ、T君(Mちゃんの兄)は?」
有香「ダウン症や!」
母親「・・・」

 

まだ、人を見て、ダウン症かどうかの見極めはつかないようです。

 

≪中2・2013年8月22日≫
有香「何で私はダウン症なの?」
母親「何でかな?」
有香「だから、ダウン症って何?」
母親「う~ん、人間の体の中には染色体と言うのがあってね」
有香「染色体って?」
母親「そういうのがあるの。お母さんの染色体は46本だけど、有香ちゃんの染色体は47本なの」
有香「…」
母親「それがダウン症よ」
有香「お母さんもダウン症なの?」
母親「どうかな?お母さんはアホアホ症かも」
有香「そんなん嫌や」


5年生の時から『自分がダウン症』であることは知っていました。『ダウン症とは何か?』について、医学的にきちんと説明する時期なのかもしれません。

 

 


支援学校 中学部3年生


≪中3・2014年10月6日≫

…有香のいる所で「私の何がイケないの?」という番組を観ても良いかどうか迷いましたが、思い切ってテレビをつけました。奥山佳恵さんとご家族が出演されて、ご次男(ダウン症)が生まれてからのことを語る番組です。テレビの真ん前で、食い入るように観ている有香を、少し離れたところから眺めていました。

有香「まあ、私もダウン症やけどな(ひとり言)」

 

≪中3・2014年10月25日≫
…有香が最近、詩吟で練習をしている漢詩は『偶成』です。11月末、支援学校の中学部の学部集会の誕生会で吟じることになっています。
今日のお稽古で「♪少年老い易く 春草の夢」と、漢詩を間違えたので、漢詩の意味が分かってないなと思いました。 

  偶成  <朱 熹>
  少年老い易く學成り難し
  一寸の光陰輕んず可からず
  未だ覺めず池塘春草の夢
  階前の梧葉已に秋聲
  

  【意解】
  若者は年をとり易く、学問はなかなか完成しにくい。
  だから少しの時間でも軽々しくしてはならない。
  さて、池の堤の若草の上でまどろんだ春の日の夢がまだ覚めないうちに、
  庭先の青桐の葉には、もう秋の声が聞かれるように、月日は速やかに過ぎ去ってしまうのである。

 

母親「有香ちゃん、少年老い易く学成り難しっていうのは、子供はあっという間に年を取って、勉強はなかなかすすまない…という意味よ」
有香「えっ」
母親「どうしたの?」
有香「認知症になる」
母親「年を取りやすいと言っても、明日、急にお婆さんになるわけではないから大丈夫」
有香「認知症になったら、全部忘れちゃうんでしょう?」

 

…最近、有香がダウン症について、本当のところはどう思っているのかな?と考えていたので、この機会に、ちょっと聞いてみることにしました。
母親「有香ちゃん、『認知症』と『ダウン症』どっちが嫌?」
有香「どっちも嫌」
母親「…」

有香「問題(質問)があるんだけど。良い?」
母親「良いよ。何でも聞いて」
有香「ダウン症って何なん?」

母親「人の体の中には、目には見えないんだけど、染色体というのがあって、皆は46本だけど、有香ちゃんは47本あるんだって」
有香「ダウン症も認知症も病気でしょう?」
母親「病気かなぁ~?」
有香「何で私はダウン症になった?」
母親「それは分からない」
有香「何で私は目が悪い?」
母親「お母さんも目が悪いから、眼鏡をかけているでしょう。Tさんは色弱って言って、赤い色が分かりにくいの。目が見えなくて、盲導犬を連れている人もいるでしょう?おばちゃんは耳が聞こえにくいでしょう?足が悪い人もいるし…。人それぞれ、いろいろあるのよ」
有香「何で私はゆっくり育つの?」
母親「それはダウン症だからよ。でもね、ゆっくり育つから、かわいい(純粋)時期が長いのよ。大人になったら、皆、子供の時のような綺麗な心がなくなるの」
有香「何で?」
母親「自分中心になるからかな?人のことより、自分が大切になって、心が汚れちゃうのよ。でも、有香ちゃんは(ゆっくり育つから)いつまでも綺麗な心を持っているでしょう♪」
母親「ダウン症は嫌?」
有香「…」
母親「お父さんもお母さんもね、有香ちゃんがダウン症であっても、大好きなのよ。一番大切な人なの。それは分かるでしょう?」
有香「うん」
母親「お父さんとお母さんは有香ちゃんが大好きだから、ダウン症だけど、頑張って生きてくれる?」
有香「うん。私もお父さんとお母さんが大好きよ。でも、何と言っても一番好きなのはお母さん」
母親「お父さんが頑張って働いてくれるから、有香ちゃんとお母さんは、楽しく過ごせるのよ」
有香「それは分かってる」

 

≪中3・2014年10月29日≫
最近、9月に放送されたハートネットテレビ『弱い』を、一人でよく見ています。アナウンサーとLilicoさんの会話やナレーションをほぼ記憶しているようです。


…寝る前の会話
有香「ダウン症だけは嫌」
母親「嫌?」
有香「うん」

母親「学校は嫌?」
有香「ううん」
母親「ダウン症じゃなかったら、支援学校には行けないよ」
有香「ダウン症じゃなかったら、支援学校には行けないの?」
母親「そうよ、皆と同じS中学に行って、すごい勉強をしなくちゃならないのよ」

有香「私は何でちびっこなん?」
母親「大きい人も小さい人も、いろんな人がいるからね…」
有香「私は何で勉強についていけなくなったん?」
母親「皆と一緒に勉強がしたかったの?」
有香「うん」
母親「難しい勉強がしたいの?」
有香「いいや」
母親「何で皆の様に勉強ができなかったのかっていうこと?」
有香「うん」
母親「お母さんが、もう、皆みたいに頑張る必要がないと思ったの。有香ちゃんの才能を伸ばす方が良いと思ったの」
有香「…」
母親「Nちゃん(同級生)もダウン症よ」
有香「えっ」
母親「知らなかったの?」
有香「うん」
有香「Kちゃん(Nちゃんの弟)は?」
母親「Kちゃんは違う」
母親「Mちゃん(同じ学校)も、Kちゃん(同じ学校)も、S君もダウン症よ」
有香「いっぱいいるんやね」
母親「Zさんもダウン症よ」
有香「それは知ってる」
有香「Eちゃんはダウン症やね?」
母親「そうよ」
有香「Y君(Eちゃんの兄)は?」
母親「違う」

 

ダウン症のある人が大勢いると知り、少し安心したようでした。明るさの陰で、いろいろと悩んでいます。
学校の先生のお話によると、親子で障害について話し合える環境はとても良いのだそうです。
有香自身がダウン症を受容するのは、まだ先になりそうです。

 

≪中3・2014年12月13日≫

有香はアナと雪の女王の『Let It Go』が大好きです。

よく歌っています。

 

  ありのままの姿見せるのよ

  ありのままの自分になるの 

  

  これでいいの自分を好きになって

  これでいいの自分信じて

 

…今日も歌っていたので、思い切って聞いてみました。

母親「有香ちゃんも自分を信じて生きてゆく?」

有香「うん」

母親「有香ちゃんも自分を好きになる?」

有香「うん」

母親「もうダウン症はどうでもいい?」

有香「うん」

母親「有難う」

有香「どういたしまして」

 

この数年、有香は、『ダウン症のある自分』を受け入れきれずに悩んでいました。『Let It Go』のおかげで一歩踏み出すことができたようです。

また悩む日が訪れるかもしれませんが、有香には乗り越える力があると信じます。

 


支援学校 高等部1年生


≪高1・2015年4月21日≫

…夕食後のこと

有香「そもそもダウン症って何?全く知らんねんけど」

母親「時々話してるやん」

有香「聞いても聞いても、忘れちゃうねん」

母親「そしたら話しても意味ないやん」

有香「意味わからん」

母親「話しても話しても忘れるんでしょう?そしたら、聞く必要ないやん」

有香「参りました」

 

≪高1・2015年7月31日≫
…家族で金スマを見ました。ダウン症についての説明を聞きながら、時々、テレビに向かってひとり言。
有香「は~い、私もダウン症で~す」

 

有香「え~そうなん」

 

有香「私はしないわ」

 

…少し、内容がシビアになってきました。
有香「お母さん、私はどんなダウン症?」
母親「最高のダウン症!」
有香「私は前はこう思っていたんだけど…」
母親「どう?」
有香「とても悲しいダウン症だったかなって…」
母親「ううん、素敵なダウン症よ」
有香「ありがとう」

 

…番組を見終わって一言
有香「私は障がいが無いダウン症で良かった」

 

ダウン症の受容が出来たと思っていましたが、まだ完全には理解してないようです。
まだまだ越えなければならない山があります。

 


支援学校 高等部3年生


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≪高3・2017年7月24日≫

…ふと気づくと、アイロンをかけながら、発達障害に関する番組を見ていました。

有香「私が将来誰かと結婚して、赤ちゃんが生まれるやん、発達障害がある子供が生まれるかもしれないから見てる」

母親「何でそう思う?」

有香「そりゃ、どんな子が生まれるか分からないから」

母親「どんな子が生まれても育てるの?」

有香「そうよ、それがお母さんや」

母親「どんな子が生まれても育てるの?」

有香「そうやって苦労して育てるのがお母さん」

有香「お母さん、お母さんも私が小学生だった頃苦労したでしょ?」

母親「何でお母さんが苦労したって思うの?」

有香「だってお母さんが学校に行きなさいって言っても、私なかなか行かなかったやん」

母親「学校になかなか行かなかったのは、学校が嫌だった?」

有香「嫌だった」

母親「今は?」

有香「今の学校は楽しい」

母親「小学校の何が1番嫌だった?」

有香「怒る先生」

母親「今の学校に怒る先生いる?」

有香「いない」

 

≪高3・2017年8月31日≫

…有香がNHKハート展の図録を見ていました

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有香「これ何?」

母親「…」

有香「これ何?」

母親「知的障害」

有香「知的障害って何?」

母親「…」

有香「知的障害って何?」

母親「ダウン症とかのことよ」

有香「だからダウン症って何?」

 

…ダウン症については折りにふれ説明してきました

母親「ゆっくり大きくなるのよ」

有香「だからMちゃん(小6)の方が大きくなったのか」

母親「Mちゃんもダウン症よ」

有香「…」

Mちゃんが大きいのはおそらく遺伝です。Mちゃんの祖父や叔父さんたちは皆180cm以上の身長だそうです。

 

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有香「これ、月、何?」

母親「肢体不自由」

有香「肢体不自由って何?」

母親「学校に車いすのお友達がいるでしょう?」

有香「うん。知ってる」

母親「そんな感じよ」

 

…意を決して聞きました

母親「有香ちゃんの学校には知的障害部門と肢体不自由部門があるんじゃないの?」

有香「知らん」

6年近く通っていますが、知らないそうです

 

ふと『肢体不自由』と『身体障害』と、どう違うのか疑問に思い調べました。

【身体障害】「肢体不自由」「視覚障害」「聴覚障害」「内部障害(内蔵疾患)」の総称。

【肢体不自由】身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態。

 

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有香「これ何?」

母親「精神障害」

有香「精神障害って何?」

母親「う~ん、分からない」

有香「分からんのかい」

 

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有香「これ何?」
母親「発達障害」
有香「発達障害って何?」
母親「う~ん、分からない」
有香「分からん障害かい」
いよいよ、『ダウン症』ではなく、『障害』について説明しなくてはならない時期が来たようです。

≪高3・2017年9月22日≫

…障害支援区分の判定には医師の意見書が必要なので受診しました。有香も同席して、医師からの質問に母親が答えるという形で書類に記入して頂きました。有香に聞かせたくないような内容を多く含みました。帰りの車中での会話です。

有香「何で私、知的障害なんかな?」

母親「有香ちゃん、知的障害なん?」

母親「有香ちゃん、算数障害じゃない?いろんなことが分かるのに、算数だけ分からないから」

有香「そうや、算数障害や」

母親「算数障害でも良いよ」

有香「何で?」

母親「優しい心を持っているから」

有香「おばあちゃんは何障害かな?」

母親「記憶障害じゃない?」

有香「そうや」

有香「お母さんは怒る障害や」

母親「…」

有香「おばあちゃんを怒る障害」

母親「…」

 

物忘れが激しくなった祖母に対する母親の行動は、有香により『怒る障害』と認定されました。


自立訓練1年目


≪自立訓練1年目・2018年8月2日≫

… 朝、NHKで『親亡き後相談室』に関する放送がありました。

ナレーション「知的障害を持つ子供の親の勉強会がありました(略) 」

有香「知的障害って何?」

母親「身体障害は身体だけど…知的障害は…いろいろあるし…難しい」

有香「算数ができないとか?」

母親「そうね」

有香「知的障害の子供を持つお母さんって…お母さんじゃない?」

母親「そうね。でも、お父さんもお母さんも有香ちゃんが大好きだから大丈夫」

有香「本当?」

母親「知的障害があっても、お父さんもお母さんも有香ちゃんが大好きだから」

有香「ありがとう」

母親「ずっと護っていくから大丈夫」

 

自立訓練1年目・2018年9月5日≫

…雑談をしていました
有香「私は量が分かる女」
食べ物や飲み物の量の違いにはとても敏感です。
母親「量が分かるのに、何で算数分からないの?」
有香「私は算数がちょっと分からない女。お母さんだったら、こう言うんじゃないの?『知的障害でも頑張ればできる‼️』」
母親「…」
有香「いくら頑張っても分からないのに。算数、頑張っても、頑張っても、頑張っても分からない」
母親「そんなに頑張ってるの?
有香「頑張ってるよ」
母親「どこで?」
有香「○○(事業所)で」
有香「私はいつから知的障害になったのかと思う。って言うか、知的障害って何なの?」

 

母親「…」
有香「ダウン症と知的障害、ほんとダブルパンチや‼️」
母親「ダブルパンチって何?」
有香「一緒にくることよ」
母親 笑
自立訓練1年目・2018年9月6日≫
母親「有香ちゃん昨日、お母さんが『知的障害でも頑張ればできる』って言うって言ったけど、お母さんそんなこと言ったことある?」
有香「ない」
母親「でしょう、お母さん、そんなこと言ったことないよ」
有香「言葉では言わなくても、心の中でそう思ってることが分かる」
母親「…」
母親「知的障害でも、ダウン症でも、お母さんは有香ちゃんのことが好きだから」
有香「それは分かる」

自立訓練1年目・2018年11月19日≫

…19才の誕生日です。

母親「有香ちゃん19才おめでとう」

有香「有難うございます」

 

 

母親「有香ちゃんの長所は?」

有香「私の長所は笑顔であることです」

母親「笑顔?」

有香「うん」

母親「じゃあ有香ちゃんの短所は何でしょう?」

有香「悪いところあったっけ?」

父親&母親  爆笑

有香「ないだろうね」

 


自立訓練2年目


自立訓練2年目・2019年11月≫ 

 

…第2回日本ダウン症会議本人発表の原稿より抜粋

私は『ちょっと算数が分からない女』です。いつから知的障害になったのかな?と思います。

数字がごっちゃになってこんがらがり、何がこうで、あれがこうか、さっぱり分かりません。

でも、私には、人には見えない物が見えます。

人の心の中の字が読めます。相手がどんな思いをしているのかもすぐに分かります。

父の心の中には「有香ちゃんがいるから仕事を頑張れる」と書いてあります。

母の心の中には「有香ちゃんが生まれて良かった」と書いてあります。

だから、私はダウン症でも知的障害でも構いません。ありのままで生きていきます。

 

 

≪自立訓練2年目・2020年2月13日≫

有香「生まれてすぐにダウン症って診断されて、その時どう思った?」
母親「ダウン症を知らなかったから、大変になるのかなぁーと思ったけど、こんなに幸せになった」
有香「本当?有難う」

 


自分自身にダウン症があると知ってから、ほぼ10年の歳月をかけて受容することができました。